国宝 大崎八幡宮
> 19号

八幡さま便り

■19号

鳩の声

【写真】八幡さま便り19号参道添いに広葉樹が多い当宮の境内は、晩秋から初冬にかけて多くの落ち葉に埋まります。

「社を掃き、神を敬うは禍をとどめ福をいたす為なり」
(『延暦17年太政官符』より)

 という古い文献もある様に、毎朝ご神前を掃き清めることは「朝清め」といわれ、神に仕える者のつとめとして「神に祈る」ことと並んで重要なものとされ、八幡宮の子鳩たちも毎朝竹箒を手に境内の清掃に励んでおります。
かつて、社寺や貴人の御殿を守ると共に、毎日掃き清める役目の人々は「殿守」と呼ばれており、その姿や仕事風景は「殿守の とものみやつこ 心あらば この春ばかり 朝清めすな 」
源公忠
(殿守の役人よ、風情の心があるならば、桜の花が敷かれた庭をこの春だけは朝清めしないでおくれ)

「忘れずよ 朝清めする 殿守の 袖にうつりし 秋萩の花」
後嵯峨院
(私は忘れないだろう、朝清めしている殿守の袖にまで、紫色の花と香りをうつした秋萩の美しさを)

という古歌に偲ばれます。当然、仙台唯一の国宝建造物たる御社殿に奉仕する八幡宮の職員は「神職」であると共に「殿守」としての役目も重いものがあるといえます。
もっとも、昭和20年7月の仙台空襲に際し、御社殿の屋根に焼夷弾が投下されたものの風の如く駆けつけた心ある氏子の人々によって消火され、大事に至らなかったことをはじめとして、八幡宮の400年に及ぶ歴史の陰には多くの「殿守」…すなわち私たちの祖先の姿があったのです。
さて、御社殿保存修理事業は現在、木工事や屋根柿葺きをはじめとする外観の修復作業をほぼ終え、今後は内部装飾の補修と外部彩色漆塗工事を中心に進められ、平成16年6月に予定されている竣工に向けて順調に進捗しております。しかしながら、その一方で奉賛募財活動については、未曾有の経済不況と社会不安等のあおりを受けて多難に満ちた状況にあり、まだまだ多くの「平成の殿守」を必要としております。皆様方の格別のご協力をお願いしたいところであります。
 新たなる年を迎えるにあたり、また初詣や伝統の松焚祭を目前に控えて、八幡宮の子鳩たちは、より一層心を込めてご神前を掃き清め、諸事怠り無く万全の態勢をもってご参拝の方々をお迎えすべく、諸準備を進めております。
仙台人の誇りであり、また心の支えともいえる八幡宮を後世に守り伝えるお気持ちの「平成の殿守」たる皆様も、新年のご加護をお祈りされるべく、どうぞお揃いでご参拝頂きます様、ご案内申し上げます。


八幡宮Q&A

Q:「神宮大麻(じんぐうたいま)」のことについて教えて下さい。

A:「神宮大麻」とは、伊勢神宮の御祭神にして私たち日本人の大御祖神さま、総氏神さまとして尊崇されている天照大御神(あまてらすおおみかみ)さまのお神札(おふだ)のことをいいます。
「大麻」とは、もともと「おおぬさ」と読み、神さまへの捧げ物、あるいはお祓いの際に用いられる木綿(ゆう)、麻などを意味し、このことから伊勢神宮にて厳粛なお祓いを行った後に授けられるお神札を「神宮大麻」と呼ぶようになったのです。
かつては「御祓大麻」「お祓いさん」とも呼ばれ、古来より伊勢神宮に仕えていた御師(おんし)と呼ばれる人々によって全国に頒布されておりました。
御師とは「御祈祷師」を略したものといわれ、一般には「太夫(たゆう)さん」と呼ばれており、全国各地へと赴き、崇敬者の求めに応じてお祓いやご祈祷を行い、その「しるし」として「御祓大麻」を頒布しておりました。
また、崇敬者の参宮に際してはその便宜を図り、自邸では御祈祷を斎行し、参宮者への饗応や宿泊等の手配もしておりました。こうした御師の活動により、全国に伊勢神宮のご神徳が広められ、神宮大麻を全国の各家庭の神棚にお祀りすることを定着させる大きな要因となったのです。
明治維新後、神宮大麻は明治天皇さまの「朝夕に皇大御神の大前を慎み敬い拝むための大御璽(おおみしるし)として、神宮大麻を国民全戸に漏れおつることなく奉斎せしめよ」との大御心のもと、伊勢神宮に設置された神宮司庁から直接国民へと頒布されることとなりました。
この「大御璽」とは、私たち国民一人一人が天照大御神さまの大御恵をいただくための象徴(みしるし)であり、いうなれば「神宮大麻」とは天照大御神さまが常に私たちと共にいらっしゃいます「みしるし」という意味といえましょう。
終戦後、神宮大麻は神社本庁より全国各地の神社を通し、国民のもとへ頒布されることとなり、今日に至っています。
現在、神宮大麻は神宮司庁にて奉製されており、奉製員は清浄を第一とし、毎朝先づ潔斎(けっさい=冷水を浴びて心身を清めること)を行い、白衣に身を包み一同揃って伊勢神宮を遥拝(ようはい)した後、細心の注意のもとに奉製され、祓い清めた後、全国の神社を通し、私たちのもとへ頒布されます。

「千早ぶる 神をまつりて こともなく 暮れ行く年を 祝ひけるかな」
(明治天皇御製)

日本の家庭では古来より、新年を迎えるにあたり、新たに伊勢神宮のお神札と氏神さまのお神札を受け、新年の家族の幸福を祈って参りました。私たちもまた、祖先が守り伝えた美しい伝統を受け継ぎ、清々しい気持ちで新しい年を迎えたいものです。
尚、大麻の上包みとして、一体一体に「花菱」文様が透かし入れられている薄紙は、神宮大麻が各家庭に届くまでに汚れることの無い様にする為のものですので、神棚に納める際には取り除きましょう。

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