国宝 大崎八幡宮
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八幡さま便り

■22号

鳩の声

【写真】八幡さま便り22号大崎八幡宮は仙台藩祖・伊達政宗公が仙台開府にあたり仙台城や瑞巌寺と共に、京都や紀州から仙台に当代一流を謳われた名匠たちを招き寄せ造営された、桃山文化を代表する豪華絢爛たる建造物です。と、一口に言いますとなんだかあっさりとした簡単なことのように聞こえますが、このことは当時、かなり天下を驚かせた「快挙」だったと思われます。
 …同じ頃、仙台と同様に小さな浜辺の漁村が、巨大な城下町を目指し街づくりを進めておりました。昨年、開府400年を迎えた「将軍様のお膝元」江戸です。
しかし、江戸が「花のお江戸」になるまではかなりの時間が必要でした。江戸城天守閣をはじめ、増上寺、上野東照宮、寛永寺、輪王寺といった「花のお江戸」を代表する豪華な建造物が建ち並び、江戸がようやく名実共に「文化都市」として完成に至ったのは、実に開府から数十年後のことだったのです。
政宗公は、開府より約15年で仙台の「街づくり」をほぼ終えておりました。それも関ヶ原の合戦から大坂の陣に至る「徳川絶対」の時代…全国の大名が息をひそめて徳川幕府の顔色をうかがい、ちぢこまっている空気の中でのことでしたから、さぞ天下の注目を集めたろうし、誰もが「こんなご時勢に、仙台の独眼竜は何を考えていることやら…」と眉をひそめたことでしょう。
しかし、現代に生きる私たち仙台っ子にとって、政宗公が徳川幕府の首府・江戸などハナにもひっかけず、自らが太閤秀吉のもとで感じた新時代の息吹を思うがままに花開かせ、京の都に次ぐ「天下の文化都市」を現実のものとした「心意気」と「実行力」は誠に痛快です。
誰もが一時の保身と目先の安逸を求めて右往左往している時、政宗公の独眼はしっかりと遥か先を見据え、周囲とは一線を画した意識の中で、目に見えぬ来たるべき日に心を砕かれていたのです。

「軒白き 月の光に 山陰の 闇を慕ひて 行く蛍かな 」 後鳥羽院宮内卿
(夏の夜に光る蛍も、ただまぶしいだけで一時の目くらましに過ぎない月光のむなしさが分ると見えて、一見不気味だけど結局は自分が一番美しく映えるであろう闇の中へ、ためらいもなく飛んで行くよ)

今秋、当宮は御社殿保存修理工事の竣功に伴い、今世紀最後の「特別公開」を開催するにあたり、政宗公が咲かせた「桃山の花」を一目見ようと全国から10万人もの拝観者が訪れることが予想されるこの機会に、広い境内を利用して様々な行事を予定していますが、ひとり八幡宮のみならず「八幡さまのお膝元」である八幡・国見地区も一体となって多彩な催しを行い、氏子地域活性化の起爆剤とすべく、地元有志によって実行委員会が結成され、より良い明日を求めて日々意見を交わしながら、事業が進められております。
不安定な時代の空気の中で、事業の成功の為には幾多の困難があることでしょうが、満開の花を咲かせる為には冷たい雨に打たれるのも必要なことと、政宗公も和歌に託して諭されています。

「初春の 雨は旅寝も つらからじ 植えにし木々の 花を思へば」
(初春の旅寝に降る冷たい雨も、かねて私が植えおいた木々を育て、花を咲かせるものと考えれば、つらいものとは思えぬ)

天下を「アッ」と言わせた政宗公の先見性豊かな「街づくり」は400年後に生きるの私たちの心さえ、捉えて放しません。
政宗公にあやかり、私たちの「街づくり」も数百年後に生きる私たちの子孫が「誇り」に思えるものとなる様、八幡宮の子鳩も地域の方々と力を合わせ、事業の成功を目指したいと思います。


八幡宮Q&A

Q:今秋、御社殿が竣功されるそうですが、特別公開の予定はあるのでしょうか?

A:大崎八幡宮では去る平成十二年三月より御社殿の保存修理工事を行って参りましたが、愈々本年十月に竣功の運びとなりました。
この間、当宮では工事に先立つ「特別公開」をはじめ八度にわたる「現場公開」を行いましたが、僅か五日間に約一万五千人もの拝観者を集めた「特別公開」を含め総勢約三万人の方々が足を運ばれ、周囲の関心の高さが浮き彫りとなりました。
今回の特別公開は、十月九日より十一月八日迄の一ヶ月間を予定しておりますが、御本殿内部の障壁画などを間近に拝観できる最後の機会として内外より注目を浴びていることもあり、期間中は十万人以上の拝観者が訪れるものと予想されております。
この為、期間中は大崎八幡宮とその修理事業について、また仙台が誇る伊達文化等についてこの機会に広く全国に紹介すべく、広い境内を活用して多彩な種々の催しが計画されており、有識者からなる「実行委員会」にて鋭意準備が進められつつあります。
また、全国から訪れる大勢の拝観者をお迎えするにあたり「お八幡さまのお膝元」である八幡・国見の地域においても、全国の「街づくりのモデル」を示すべく、地域の人々が中心となり種々の催しについて計画を進めており、今回の「特別公開」はまさに「八幡宮」と「地域」とが一体となった「フィールドミュージアム」を目指し、その実現のため日々奔走しております。
思えば今より四百年の昔、伊達政宗公は仙台藩の総鎮守たる大崎八幡宮の御鎮座にあたり、日本史上特筆すべき豪華絢爛さを誇る桃山文化の一翼を担った、当代随一の巨匠達を京都や紀州より仙台に招き寄せ、古今に比類のない壮麗なる御社殿を造営され、奥州仙台六十二万石の威風を天下に示されました。
当宮では今後共、「政宗公による御偉業の精神を継承し、次代を担う子孫へと引き継ぐ」という使命を果たすべく、平成十八年に迎えます御鎮座四百年の佳年に向けて微力を傾けつつ尽力して参る所存で御座いますので、引続き暖かいご支援を頂きたく、宜しくお願いを申し上げます。

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