42号

鳩の声

日本には四季があり、春夏秋冬それぞれの音を楽しむことができます。小鳥のさえずり、蝉の鳴き声、枯葉が舞い、雪がしんしんと降り積もる。静寂に包まれた神社で過ごす毎日では、そんな自然の音がすっと耳にはいり、メロディーを紡いでいきますが、皆様が「神社」と「音楽」というふたつの言葉で想像するのは、雅楽ではないでしょうか。

雅楽は5世紀ごろ、中国や朝鮮半島から日本へと伝わり、インドやベトナムから中国を経由して伝わった音楽は「唐楽」、朝鮮半島の高句麗・新羅・百済から伝わった音楽は「高麗楽(こまがく)」として分類されております。
「雅楽」という言葉は、中国はもちろん、朝鮮半島やインドシナ半島などの漢字圏でも使われてきましたが、その意味するところはそれぞれ違っています。
中国では、聖人として崇められている孔子をお祀りする「孔子廟」で演奏される儀式音楽をいいます。また朝鮮半島でも祖先をお祀りする音楽など、儀式音楽の総称として使われておりました。日本には、中国で‘宴会の音楽’とされていたものが「雅楽」として入ってきました。そしてその後、日本の雅楽は宮廷音楽として今日まで継承されてきました。
雅楽の演奏に用いられる代表的な楽器は笙・龍笛・篳篥(ひちりき)の三管です。

笙は伝説上の「鳳凰」が羽をたたんで休んでいる姿を象って作られたと言われております。ハーモニカと同じ原理で、吹いても吸っても音が鳴り和音を奏でることができます。日本には早い時期に大陸から伝わり、正倉院にも所蔵されております。

龍笛は竹や花梨の木でできた木製の横笛です。音域が広いので、篳篥が出ない音をカバーして演奏を豊かにします。

篳篥は二枚舌の短い縦笛で、大きな音をだすことが出来ます。龍笛と一緒に主旋律を担当することが多く、雅楽という言葉で想像する「ぷわーん」という音は、恐らく篳篥の音ではないでしょうか。

当宮の小鳩たちは前述した三管のいずれかを受け持ち、日々練習に励んでおり、神社の祭典や神前結婚式の際に演奏をしております。
また、8月12日の御鎮座記念祭では、東京の雅楽演奏グループ、伶楽舎(れいがくしゃ)の方々をお招きし、夕闇のなか篝火に照らされた幻想的な舞台で、雅楽の演奏に合わせて神前神楽や人長の舞などを奉奏しております。

雅楽を耳にする機会が少ない今日この頃ですが、毎月一日・十五日の十時より執り行われる祭典で雅楽が演奏されますので、ご参拝の際は小鳩たちの頑張りに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

八幡宮Q&A

Q:家屋のお祓いについて教えて下さい。

A:家屋やビルの新築に際して行われるお祭りとして、地鎮祭、上棟祭、竣工祭などがあります。

【地鎮祭】工事を始めるに際して、その土地の神様に挨拶をして土地を祓い清め、工事の安全を祈願するお祭りです。祭場は工事をする現場で、その土地の中央の四隅に葉のついた青竹を立て注連縄を廻らせ、その内側に祭壇を設置し、神様の依代として神籬をたてて祭祀が行われます。
また、紙や麻を細かく切った切麻や米、塩などを撒いてお祓いをすることもあります。地鎮祭で特徴的なことは、鎌・鍬・鋤を用いて、草を刈り、土地を穿ち、掘り起こす動作を行うところです。「えいっ」という掛け声とともに盛り砂に鍬を入れる姿は、テレビなどで目にする機会があるのではないでしょうか。

【上棟祭】建物の柱が立ち棟木(屋根の一番高い位置にある部材)を上げる段階で行われるお祭りです。建物の神様をお祀りし、その後の工事が安全にすみやかに行われ、永く建物に災難が降りかからないように祈願します。家屋を守護する神様と産土神を記した棟札を柱の中央に貼り、魔除けの意味をもつ作り物の弓矢や扇が飾りつけられます。
また、お祭りの後には工事関係者や近所の人々を招いて餅や小銭などを撒いて災いを除くこともあります。

【竣工祭】建物が完成した際に行われるお祭りです。新築の建物を祓い清め、神様に無事完成したことを奉告し、建物が末永く丈夫で、そこに住む人の繁栄を祈願します。「新室祭(にいむろさい)」や「清祓」とも呼ばれます。

お祭りの次第は地域によって多少の違いがあるようですので、お近くの神社に尋ねてみるとよいでしょう。