52号

鳩の声

八幡さま便り表紙

去る4月30日天皇陛下(現上皇陛下)が退位され、翌5月1日、今上天皇が即位されました。元号が「令和」と改まりました。謹んで奉祝の意を誠心から捧げ、国民ともに慶賀の祝辞を申し上げたく存じ上げます。

「一世一元の制」が明治時代に成立して以来の日本独自の元号制度は後に法律でも定められ、日本の文化として馴染み深く先人たちより代々重ねられた歴史の想いある美風となっています。

宮中においては、本年10月には即位の礼が予定されており、また11月には大嘗祭(だいじょうさい)という神事が予定されています。それら一連の儀式をもって「御大典」(ごたいてん)と申し上げ、御代替(みよが)わりの御式となります。

そもそも天皇陛下は日本国の「象徴」であられると憲法で規定されておりますが、国事行為などのご公務(任命式にはすべて署名され、叙勲においてもすべて目を通されます)はもちろんのこと宮中祭祀としての神事の御奉仕が極め て大切なおつとめとなっております。

今上天皇は第126代となりました。これはまさに世界に比類なき一国の歴史としての果てしなく連綿と継続されている伝統です。

その歴史は実に日本神話につながり、神代の昔・神武天皇から数えて今年は皇紀2679年となり、2月11日の建国記念日の祝日も初代・神武天皇御即位の日に由来します。

古代の神道祭祀は社殿を設けず神籬(ひもろぎ)、磐座(いわくら)という樹木や石を依(よ)り代(しろ)として神を降臨させ祭祀を営んでおりました。神奈備(かんなび)とされる山自体をご神体とする形もあります。社殿は神の仮の宮で、祭祀が終了すると取り壊しておりました。

今回の大嘗祭では、その本義に従って「大嘗宮」(だいじょうきゅう)という建物を、皇居東御苑に地鎮祭から執り行って建設し、そこにお供えする新穀を予め選定したのち儀式を行って収穫し、大祓式を執り行い、お浄めのお祓いと鎮魂・祈念を重ねて11月14日に大嘗祭を斎行し、祭祀が終了したあとには建物は撤去される運びとなっており、大饗(だいきょう)という直会(なおらい)(もてなしのさかもり)も二日間行われる予定です。

直会は、「神人共食(しんじんきょうしょく)」とも呼ばれる、神さまにお供えをしてから感謝して食物を頂くという意義の古式ゆかしい神事が、まさに宮中において正しく確実な形で伝統を受け継がれて連綿と執り行われ続けている。その事実そのものにこそ、日本が日本で在り続けてこられた核心があるものと拝察いたします。

各地の神社において執り行われている例祭の神事も本義は収穫感謝祭であり、お祭りを「例(ためし)のまにまに」必ずそのように行うこととされ、何時如何なる時代にあってもひたすら順守されております。大崎八幡宮でも文政7年(1822年)例祭の大絵馬が現存しており、御神輿が大石段を下って行く様子は現代も変わらず斎行されております。

近年では東日本大震災のおりにも平成の天皇陛下は被災地に足繁く訪れていらっしゃったことを忘れられません。

災害のおりなどに同朋をいたわる気持ちが必ず湧き溢れるのもこうしたとても長くかつ中心部分が確固として揺るぎない伝統に基づく日本人の良き特性でありました。

日本の伝統文化として顕著にその形を表して残す役割を果たしているのが神社の存在です。

本年はここ大崎八幡宮においても奉祝の神事がとりわけ臨時祭という形で予定されております。皇室のゆかり深い御祭神をお祀りする神社は「宮」と名付けられておりました。年間通しての例祭を始めとする祭典諸神事においても、 毎朝の御日供祭においても天皇陛下の御安泰と皇室の弥栄を必ずお祈り申し上げられております。

令和元年、慶びと奉祝の意も込めて是非お宮へご参拝に足を運ばれることお待ち申し上げております。

八幡宮Q&A

Q:なぜ鶏(にわとり)が八幡宮にいるのか?


A:昨年末から八幡宮境内に鶏が数羽おりますが、それはなぜか、どんな意味があるのか、というお問い合わせが多くあります。
「にわとり」とは、キジ科の鳥で古くから家々の軒先で飼育されていた鳥で、あまり飛ばず、頭頂に赤いトサカを持ち「にわとり」と呼ばれるようになりました。
新元号の「令和」の出典となったのは「万葉集」ですが、同じく我が国の古典とされる「古事記」には天照大御神様(あまてらすおおみかみさま)が天の岩戸に御隠れになられて世の中が真っ暗闇となった時、人々は困り果て夜明けを告げる「長鳴き鳥」(にわとり)を集めて鳴かせて、天照大御神様が姿をあらわす事となり、人々は安堵したとされています。
また、「鳥居(とりい)」は神社の入り口に建つ門であり、鳥(にわとり)の止まり木が「とりい」の語源という説 もあります。かくして鶏は日本人にとって由緒深い鳥でもあり、神社にとって神聖な場所の神様のお使いの鳥(にわとり)でもありました。
大崎八幡宮境内の西側に国見の丘陵地帯から流れる小石沢という小さな沢がありますが、ここに架かる橋は「鶏橋」と呼ばれています。これは『毎夜一羽の金色の鶏が橋の欄干で鳴くので、人々が不思議に思い、八幡様へお参りしたところ、八幡宮に奉納された「鶏の絵馬」から抜け出して橋の方角へ飛んでいき鳴いていたことが分かりました。原因がわかった人々は絵馬に金網を張ると鶏は鳴かなくなりましたが、その夜から雨が降り続き間もなく大洪水が起こってしまいました。人々は毎夜鳴いていたのは洪水を知らせるためであったと知り、橋の名前を「鶏橋」と名付けました。』という話もあります。(『宮城県史』、『仙臺傳説集』)
このように八幡宮と様々なご縁がある鶏ですが、現在境内に居るのは鶏ではなく少し小型の鑑賞用として飼育されてきた矮鶏(チャボ)で、当宮で飼育しているものです。
ご参拝の際には矮鶏(チャボ)を驚かせたりすることなく、心を落ち着かせて放し飼いされているその愛くるしい動きや「コケコッコー」という甲高い鳴き声にふれてみてはいかがでしょうか。