56号 「大崎八幡宮 末社 北辰社」

鳩の声(大崎八幡宮 北辰社 由緒)

八幡さま便り表紙

御祭神はあめ御中主のみなかぬしのかみという。古事記によると「天地開闢かいびゃく」(世界の始まり)の際に現れた「造化の三神」(天地を造った神様)の一柱ひとはしらで大自然を司る神様として祀られています。

創建時期は不明ですが寛政年間の文献に記載があることから江戸時代中期に『天の中央に位置する天御中主神天あめのみなかぬしのかみ』が神仏習合によって北極星を神格化した『北辰菩薩ほくしんぼさつ妙見菩薩みょうけんぼさつ)』として祀られていたと推測される。明治期の神仏分離令による神社からの廃仏毀釈はいぶつきしゃく(仏教を排除する)で取り壊されることなく「北辰社」という名で大崎八幡宮の境内に残され、現在に至る。

この度、令和御大典事業といたしまして大崎八幡宮境内に末社として鎮まります北辰社の社殿造営に伴う正遷座祭が4月15日に斎行されました。今回造営するにあたり、御社殿の様式は「神明造」となりました。

神明造とは古代より継承されている神社本殿建築の形式の一つであり、唯一神明造とされている伊勢の神宮の正宮を除いて同じ神明造の社殿は全国の神社に見受けられます。

近年の建築技術の発展により現代では使用されてない部分もありますが、それぞれ名称と意味がございますので、Q&A方式にてご紹介させていただきます。
(※それぞれの名称・意味には諸説ございますので予めご了承ください)

Q 屋根の両側にあるVの字の形をした部分は何でしょうか?

A 「千木ちぎ」と呼ばれており、屋根の両端で交差させた物で、古代の住居建築様式「天地根源造」にある2本の材木をXの字の様に交差させて棟木むなぎとなる材木を両側に渡し、屋根を造った名残とされています。現代建築では飛び出た部分は切り落としますが、古代の様式が残された神社建築では煌びやかに装飾が施され現代まで継承されています。また、千木の先端には二種類あり、先端が地面と水平になっている物は「内削ぎ」、先端が地面から垂直になっている物は「外削ぎ」と言われており、北辰社は「外削ぎ」となっています。一説には内削ぎが女性神、外削ぎが男性神をお祀りしているとされておりますが例外もあるようなので、神社へ参拝された際は千木がどちらの種類か確認してみると面白いかもしれませんね。

Q 屋根の上に複数ある文鎮の様な物はなんですか?

A 「鰹木かつおぎ」または「堅魚木かつおぎ」と呼ばれており、茅葺かやぶき屋根が風で飛ばない様に押さえとして用いられたものです。名称に魚の名前が使用されていますが、鰹節に形が似ていることから鰹木と言われているそうです。千木と同じく鰹木の数が偶数だと女性神、奇数だと男性神がお祀りされていると言われますが、こちらも例外があったりするので、何の神様がお祀りされているか調べた後に社殿の屋根を見上げてみると新たな発見があるかもしれませんね。

Q 屋根の下に飛び出しているハの字に配置された8本の木は何のためにあるのでしょうか?

A 「鞭掛むちかけ」または「小狭小舞おさこまい」と呼ばれており、屋根に茅を葺く際に茅がずれ落ちないよう鞭または縄を張って固定するため物です。しかし、建築技術の発展や茅葺かやぶきではなく板葺いたぶき屋根や北辰社の様銅葺どうぶき屋根の様にずれ落ちる心配がないので、現在はほとんど使用されておりません。使用されなくても失われる事無く、現在も継承されている建築技術は古の祈りの形を後世へ継承する神社神道と共に素晴らしき日本文化と言えます。

昨年には同じ末社の諏訪社と鹿島社も新しくご造営されました。ご来社の際は国宝の社殿はもとより末社もご覧頂き、神社建築に隠れた魅力を探してみてはいかがでしょうか?