贈り物の掛け紙や祝儀袋にはのしがついています。

のしとは、のしあわびからきた言葉です。海の幸の豊富な日本では、古来鮮魚をハレの日、つまり神事、祝儀のときの贈り物にする風習があったのです。

仏教の普及により、生ぐさいものをさけるようになり、魚類の代用品として用いられるようになったのが、のしなのです。

ですからのしは慶事用であって、弔事には用いません。また魚介類にものしは魚をあらわすのですから、重なるということでつけません。のちには肉や卵などにもつけないようになります。

これに対し、水引の由来は、中国貿易のさいに輸入品の箱の上に結んであった赤と白の縄からきているといいます。中国では輸出品であるという印として紅白の縄をつかっていたのですが、日本ではこれがめでたいものだと思われたのです。

この習慣が定着したのには、日本に古代からあった結ぶことによって魂がそこに宿ると考えられていた結びの信仰が、その根本にあったからだといわれています。

古来、贈答には魂を贈りあうという心があったものと思われます。

水引きの結びかたには、家結びといって、それぞれの家によって、独自性がありました。たとえば天皇家ではその紋章にちなんで結びは十六弁の花結びです。

現在一般的には、市販されている祝儀袋を買ってきますから、結び方は統一されています。水引の結びかたは、結び切りと蝶結びがあります。結婚や弔事の際には二度と繰り返さないようにといって、結び切りにします。蝶結びは、略式ですが、この蝶は蚕の蛾の意で、絹を生産するという縁起のよいことの象徴です。

のし袋は、慶事と弔事では包みかたがちがいます。慶事では包み紙の端が表の左側にあり、弔事では裏の右側にきている。また上下の折った部分は、慶事では上部に下部を重ね、弔事ではその逆になります。つまり上になった部分が天を向くのが慶事、下を向くのが弔事です。