男女ともに一人前の人間になったことを公認される式が成人式(成年式)です。むかしの武家は元服ということを行いましたが、それはわが国固有の成年式を武家の礼法をもって行うものです。しかし元服のような一つの定型ができ上がると、またそれが一般庶民の間にも影響したようです。

武家の元服は成人に侍烏帽子(さむらいえぼし)をのせる儀式で、これは公卿の初冠(ういこうぶり)式に倣(なら)ったものでした。一般でも、帽子はいただかなくても元服とか烏帽子祝ともいいました。成年式は、多くは十三歳から十五歳前後におこなわれ、昔は髪かたちと衣類を大人の風に改めたものでした。またそれまでは幼名で呼んでいたものを正式に大人の名がつけられるならわしでした。

この式の時に親戚や近所の人を招いてお祝いをする風習は今も広く行われていて、ただ違うところは年齢が二十歳になっている点です。元服には血縁の長老または社会的に然るべき人が烏帽子親になり儀式を取りしきりました。

成人となった者は神事に参加する資格を与えられたといいます。これが今では公民権を与えられて、親から離れ、選挙権をも与えられています。そのほか成人にはいろいろ試練が待っていて若者組に入って鍛えられ、信仰的には霊山霊所に詣ることもありました。

人が生まれ育って、一人前の資格を与えられるについては、洋服や着物を着飾ることはうわべのことで、本当はきびしい世の荒波に乗り出すことを意味します。神社などにお参りして晴れ晴れとした成人たちに、前途の平安を祈らずにはいられません。